地域の現状と地域再生に向けた取組み状況

平成19(2007)年8月1日に米国ミネソタ州ミネアポリス市郊外で鋼3径間連続トラス橋の崩落事故が報道され、インフラのメンテナンスの重要性が認識されつつあるのですが、平成19(2007)年6月20日に木曽川橋梁(トラス橋)の鋼材破断に続いて、8月31日には秋田県本庄市近郊の鋼トラス橋の鋼材破断するなど、道路インフラ構造物の劣化・損傷事例が後を絶ちません。さらには、同年9月末には道路交通の安全を担う信号機も錆により倒壊しているとの報道がなされていました。バイオ、ナノ、情報通信への技術革新が謳われる中、人間の生活の基盤であるインフラ構造物の荒廃が日本でも着実に進んでいます。

観光立県を推進する長崎県には、教会群等の観光資源が半島や離島に点在していますが、それらを結ぶ多数の渡海橋や港湾等のインフラ構造物の老朽化が進行しています。国以上に県の財政状況は厳しく、建設事業費は削減され、維持管理費の増額も見込めない状況にあり、費用や人材の面で多くの課題があります。

長崎大学工学部では平成19年1月に長崎県をはじめ県内市町や地元企業との連携による共同研究・事業の推進を目的として「インフラ長寿命化センター」を設立しました。一方、長崎県はインフラ構造物の予防保全的管理手法への転換を図るために、公共土木施設維持管理基本方針を策定するとともに、維持管理の計画ならびに体制の充実に取り組んでいます。また、県民参加の地域づくりを推進するた、道路、河川、港湾などの清掃等を行うボランティア・愛護団体への支援事業も行っています。

地域再生人材創出構想

県内の自治体職員、建設・コンサルタント業、NPO、地域住民を対象とし、道路構造施設の維持管理に携わる"道守"を養成し、"まちおこし"の基盤となるインフラ構造物の再生・長寿命化に係わる人材を創出することを目的としています。技術士、診断士、土木施工管理技士等の各公的資格レベルに応じた基礎知識、応用能力をもつ人材と、一般市民(ボランティア、愛護団体等)を対象として構造物の日常的な観察・点検ができる人材を養成します。インフラの維持管理には調査、診断、特定高度技術が必要であるため、講義、実験、実地研修等を組み合せた総合的なコースを設置します。また、一般市民に対しては公開講座コースを設定します。本人材養成ユニットをインフラ長寿命化センターの任務として位置づけ、終了後も継続的に人材養成事業を実施展開します。これらを遂行することにより、観光振興及び新産業創出の両面から雇用創出と地域再生・活性化を支援します。

自治体との連携・地域再生の観点

【自治体との連携】
長崎県は長崎大学と連携して観光立県の基盤となる「公共土木施設維持管理基本方針」の策定に取り組んでいます。本提案により、インフラ維持管理に貢献できる高度技術者を育成するとともに、継続的できめ細かな点検を必要とする予防保全型の維持管理事業を推進し、その業務に携わる地元企業の活性化を促すことができます。

【地域再生との関連性】
観光立県長崎の地域再生には、基盤となるインフラの長寿命化、機能保持・向上が不可欠であり、社会基盤の予防保全型維持管理が導入されました。本人材養成ユニットにより、離島・半島をはじめとする県内広域に分散するインフラを適切に維持管理することが可能となり、地域の活性化と雇用創出が期待できます。

【地域のニーズ】
長崎県の地勢条件に応じた維持管理を行うために、離島半島に多数点在するインフラ構造物の維持管理ができる人材が求められています。また、投資費用の低減化と平準化を目指すアセットマネジメントを導入するためにも、維持管理に対応できる自治体職員と地元企業の人材養成が急務です。

【地元企業等からの協力】
長崎県建設業協会、測量設計業協会からは、企業ニーズとインフラ維持管理の技術ニーズに応じた人材養成の要求があり、本事業への協力が得られるとともに、修了後には"道守"として活躍が期待されます。

【地域再生への貢献度】
構造物の検査・投資計画のマネジメントができる診断士、技術士レベルの技術者を育成することで、県内インフラ構造物の維持管理への貢献が期待されます。また、地域住民によるインフラ構造物の日常的な目視点検、道路、河川、海岸、港湾、公園等の愛護団体を通じたインフラ維持管理の啓蒙活動等、県民参加の地域づくりと観光立県にふさわしい地域再生への貢献が期待されます。

ミッションステートメント

期待される波及効果

"道守"養成ユニットにより、維持管理計画の立案・実施へ貢献できる技術者を継続的に供給することができるため、"道守"集団の活躍により、観光立県長崎の交通インフラ施設の維持管理を効果的に遂行して、観光産業の発展に寄与できる。


造船、機械、IT産業の人材と技術をインフラ長寿命化分野へ移転することができ、退職者の再雇用が図れる。また、これらの技術が点検、計測、診断および補修・補強工法などの"インフラ長寿命化"に貢献する新産業となるとともに、高度な計測技術やモニタリング手法の開発は新たな産業創出のシーズとなることが期待される。


特殊な補修工事の大部分は県外企業が受注していたが、地元企業の技術者を"道守"として養成することにより、県内企業の受注機会の増加が見込める。そのため、地元建設業の人材育成と活性化、雇用創出を図ることができる。


予防保全により社会資本の長寿命化で更新投資を削減できるため、県市町財政の経費節減が可能となり「地域再生」に寄与することができる。


本養成ユニットは、"道"だけではなく、地域住民の生活に必要不可欠な"水""海""川""山""森"を守る人材育成への展開が期待できる。それにより観光立県ナガサキの発展にさらに寄与することができる。

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